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HSBCが見たベトナムの経済

ベトナムドンの引下げによる 赤字解消への道


4月のベトナムの製造業実績は目覚しいものでしたが、HSBCはベトナム中央銀行が今後も成長を促進し、貿易・財政赤字を抑制するためには、VNDを切り下げるべきであると考えています。
HSBCの先行指標(新規受注マイナス在庫)は、生産の数ヶ月先までの拡大を示唆しています。この好調な業績は世界的な需要によるものではなく、ベトナム製造業へのさらなる新規投資によるものです。

低迷する国内企業

国内企業の輸出は前年比で1.6%と減少する一方、外資系企業の輸出は12.3%と拡大しています。外資系企業の投資と雇用は伸長していますが、国内企業がFDIによる資本や技術の連携を進めなければ、ベトナムの国内産業の空洞化が懸念されます。輸出拡大に伴うVNDの上昇は国内企業の価格競争力を押し下げ、さらには原材料価格の下落がより状況を苦しいものにしています。
ベトナムにおける民間部門、国営部門の両部門で債務は増加傾向にあり、政府は支出を抑える努力をしてきましたが、公共投資に関わる利払いの上昇により費用は増加していくものと思われます。

FDIの利点

現在のベトナムではFDIによる雇用の改善が、投資が停滞する国営部門の雇用や中小企業の雇用を相殺している状況です。
政府はインフラビジネスに関わる外資系企業に対して税制を優遇していますが、これは国内企業が外資系企業との間でのサプライチェーンを構築・活用し、ビジネスでの連携を強化させることが最終的な目的です。
しかし、消費財を中心とした輸入は回復傾向にあるものの、実際のデータは国内企業のさらなる空洞化を示しています。

輸出入のアンバランス

ベトナムの輸出は停滞する国内企業ではなく外資系企業の、特に電化製品の輸出が支えてきました。対照的に、第一次産品の輸出はコモディティ価格の低下と需要の低迷により減少し、繊維や靴などの伝統的な国内製造業は価格の競争力を失い、輸出が鈍化しています。
一方、急増する輸入需要を背景に、ベトナムの貿易赤字は約30億USDに達しています。外資系企業の輸入増加は、ベトナムの主要な強みである廉価な労働力に関しては、さほど憂慮すべきものではありません。ただ、国内企業の輸出が伸び悩んでいる一方での、輸入の急増が懸念点です。自動車を含め多くの輸入品がベトナム国内での生産や技術の向上を伴わず、ただ消費されているからです。

継続的な改革が必要

HSBCでは、短期的には輸出の増加がベトナム経済を悪化させるものの、政策立案者の利下げと通貨の切下げによって成長を促せる余地があると考えています。
ベトナム中銀には、通貨の切下げは対米ドルの債務負担を増加させるという懸念があります。しかし、もし通貨引下げもしくは利下げを行った場合、ベトナムの輸出は今以上に競争力を持つことになる一方、輸入についてのメリットが減少します。これにより財政と貿易の双子の赤字からベトナム経済を救うことになり、輸出の競争力の強化にもつながります。
為替政策の他にも、政府が財政の運営だけでなく外資系企業と国内企業のビジネスのつながりを強化するために、なすべきことが多くあります。支出の合理化を図るためには継続的な改革が必要です。
税収の減少傾向も考慮した上で、課税対象の拡大など財政再建への改革が必要です。ベトナムでの賃金コストの上昇が今後も続く場合には、FDIの減少も予想されます。つまり、外資系企業による輸出に依存しているベトナムの製造業は、継続的な改革がなされなければ短命で終わってしまう可能性が高いと言えます。

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