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HSBCが見たベトナムの経済

貿易赤字が引き続き懸念事項


世界貿易が停滞する中、ベトナムは安い人件費を背景にグローバル・シェアを増やしています。しかし、膨らむ貿易赤字には警戒が必要です。
ベトナムの製造業は異常値を示しており、世界的な需要が減少しても拡大を続けています。靴、繊維、携帯電話などの製造業において、安価な労働力がベトナム製品の価格と品質に競争力を与え、受注を増やしています。
5月、PMIは54.8に上昇し、過去最高を記録しました。これはベトナムの新規輸出受注が減少し、アジア全域でPMIが低下している現状からすれば、驚くべき数字と言えます。
雇用指数も改善し、今後数ヵ月にわたり上昇し続けると思われます。HSBCの先行指標である新規受注マイナス在庫は3.7から3.1に減少しており、在庫の増加は将来の需要に対する生産者の自信の表れと言えます。また、新規受注は急増しており、今後数ヶ月にわたり成長が見込まれます。
FDIは新工場の操業開始で見込まれる製造業の将来的な余力を踏まえて、4月の5%から5月には7.6%に急増しました。徐々に改善している国内需要は、製造業の力強い稼働率を支えています。今までのマイナストレンドから2015年上半期の貸付額は、前年度比17.5%(2014年12月以来の4.3%の成長率)に拡大しました。一方で輸入が増え、貿易赤字が拡大しています。
FDIが5月に前年度比で7.6%と増加していることは注目に値します。労働競争力、減税、及びインフラの改善が海外からの投資と輸出を押し上げていますが、国内企業はベトナム固有の競争力を活用しきれていません。
5月、国内企業の輸出が1.7%下降するなか、石油業以外の外資系企業の輸出は18%上昇しました。グローバル・コモディティ・サイクルの減少、高債務、生産性と貿易促進に対する限定的な政府支援、ベトナムドン高が低調な数字の背景にあります。

ベトナムドンの切下げ

観光客が前年度比で12.6%減少した一方、国内需要は徐々に改善され、貸付額は前年度比17.5%の増加となりました。これは乗用車や機械のすべてを輸入に頼っているからです。税関の統計によると、5月中旬までの貿易赤字は37億USDでしたが、観光客の減少はドン安への圧力となりかねません。
外部見通しの悪化やドン安圧力への対抗措置として、中央銀行は2015年5月に通貨を1%引き下げました。中央銀行は2%以上の通貨引き下げを2015年度中は実行しない見通しで、政策金利は5%に保たれると市場関係者は見ています。
米ドルの売買が許容取引を超えた場合はドン高、またはドン安の圧力となり、中央銀行の対応を制限する恐れがあります。IMFによる試算では、ベトナムの外貨準備高は2014年末時点で輸入量の約2.5ヶ月分、約338億USDです。

固有のリスク

中央銀行が最重視すべきは外貨準備の流動性であり、それが通貨の安定につながります。ベトナムの外貨準備高は上昇しているものの、世界的な基準では輸入額の3ヶ月分が必要とされており、比較するとまだ不足しています。
このままでは外貨準備高不足が問題となりかねません。特に通貨安定を図るために、中央銀行は外貨準備を活用する際に注意が必要です。さらに、ベトナムの貿易赤字もリスク要因の一つとなります。中央銀行は通貨の安定を維持するため、準備金を100億USD以上引き上げる必要があります。
我々は2015年の貿易赤字は35億USDになると推測しており、経常収支は若干の黒字です。一方、急激な変化も考えられるため、貿易支出は引き続き注視する必要があります。

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