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HSBCが見たベトナムの経済

依然として スローペースな成長


現在ベトナムのGDPはプラス成長を続けおり、今後数ヶ月の間にTPPが締結されれば、短期的にはGDPのより大きな成長が見込めます。問題は国営部門の改革を加速し、ベトナムの廉価な労働力を更なる成長に活かせるかという点です。
世界経済が低迷する中、6月の輸出は加速し、前年同月比約10%のプラスとなりました。先行指標である新規受注マイナス在庫は6月には54.8から52.2に下がり、生産は今後数ヶ月に渡って増加する見込みです。貸出残高も需要の改善により、前年度比17%の増加になりました。
現在、最大の輸出国であるアメリカとの間にまだ自由貿易契約は締結されておらず、6月29日のオバマ大統領のTPA(貿易促進権限)署名から数ヶ月後、TPP(環太平洋連携協定)が実経済に寄与するようになれば、飛躍的な成長が期待されます。

活かすべき強み

TPPがベトナムに多大な恩恵をもたらすこと明らかです。ベトナムの安価な労働力のトレンドは今後20年続くものと思われます。労働生産性は域内において高くはありませんが、成長率は効率的なFDI(外国直接投資)により域内で最も高く、今後GDPの加速にも期待ができます。問題は今後ベトナムが安価な労働力を駆使して利益を上げられるかどうかです。
ベトナムの成長は安価な労働力と豊かな耕地に支えられています。人口ではフィリピンに劣るものの、労働人口は東南アジアではインドネシアに次ぎ2番目に豊富です。東アジアと比較して、ベトナムは安価な労働力により強みを発揮することができます。
また、農村からの労働力が単純作業の製造業を支えてきたことにより、近年ASEANの中では最も高い労働生産性を維持しており、同時に最も安価な労働力を誇っています。

外資系企業が輸出を牽引

一方、2007年のWTO加盟を経て、コモディティ商品、食品、製造業は輸出の拡大に大きく貢献してきました。しかしリーマンショック以降、低迷するコモディティサイクルが世界的に広がる中、資本と資源の配分について方向感のない政策や非効率な管理体制により、国内企業の競争力が弱まりました。
ベトナムでは外資系企業の存在が、国全体のGDPに大きく寄与してきました。現在も外資系企業がベトナムの輸出を牽引していますが、国内企業は安価な労働力という利点を活かしきれていません。このようなことから、WTO加盟後、ベトナム企業はグローバル市場のシェア拡大に努めてきましたが、なかなか成長に結びつけられずにいます。

中期的な持続可能性

HSBCの分析では現在の成長モデルは持続可能性が低いとみていますが、これは中期的に安価な労働力が減少して賃金が上昇することにより、成長の鈍化が予想されるためです。要因としては資本の配分方法、また国有部門の非効率性が挙げられます。
ベトナム政府は法令60をHP上に掲載し、2015年9月に一部の主要産業を除く多くのセクターで、外資系企業の49%出資比率上限の規制解除を実施するとしています。例えば、主要産業のひとつは銀行であり、その上限は30%となっていますが、銀行以外のどの分野を主要産業とするかの詳細はまだ不明です。
法令60それ自体は正しい方向への一歩であると考えられますが、こうした規制解除の詳細が明らかでないことは、実施には相当な時間がかかることを示唆しています。また、国有企業の民営化の取り組みや外国からの投資への自由化などにも、今後も注意を払う必要があります。

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