ビジネス

Business

NNAベトナムが行く! ベトナムの「ホント」のところ

必要なのは「人間力」
日本人の日越通訳者に聞く vol.3


「日本語・ベトナム語の通訳者は大部分がベトナム人。同時通訳までこなせる日本人は数えるほど」。NHKのBS放送や首脳レベルの会談で数々の通訳をこなしてきた伏原宏太さんは断言する。では数少ない日本人通訳たちは、両国の橋渡しにどう取り組んでいるのか。

日本人にとってベトナム語の最大の難関は6つの声調がある発音。達人たちにとっても、少しの違いで意味が変わったり、礼を逸しかねない声調や言い回しは要注意だ。さらにベトナムは南北で発音も語彙も異なる。ホーチミン市を中心にフリーで活動する河村きくみさんは、「日々勉強が欠かせない」として、テレビや日常会話を通じて新しい言い回しを吸収している。

良い通訳とは?

だが、プロの通訳は語学力だけでは不十分。達人たちは、「真意を伝えることが重要」と口をそろえる。伏原さんによれば、通訳は「俳優と似ている」。笑い話であれば、躍動感を持たせて起承転結をつける。話し手の言葉遣いや呼吸、声の高低や抑揚までをも他方の言語に吹き込んでいく。

トラブルが起きたときに呼ばれるケースが多いという河村さんは、「まず前置きとして文化の違いを考慮し、絡まった糸をほどいておく。通訳はそれから」と明かす。

逆に訳すべきでないこともある。交渉で感情的になった日本側の「ふざけるな!」という発言を、ある通訳は「何を言いたいのか分からない!」と転換した。直訳すればケンカになり、それは話し手の真意ではないからだ。ただし、こうした機転が効くのも、両国の文化、歴史や宗教に広く通じているから。

「月の初めはカモ肉を食べない習慣があります。どうぞ他の物を」――。ベトナム人に食事の招待を受けた日本の賓客に、伏原さんはこう解説して、別の料理を選んでもらったことがある。特に、政治家や企業トップ間の交流では台本がない。だからこそ通訳が日頃から磨いてきた知見が問われる。

昨年まで在ホーチミン日本総領事を務めた日田春光さん(現フォーバルベトナム会長)は、外交官の経験から、「多様な分野の新聞・書籍に目を通し、豊富な語彙、ことわざを蓄積すること」と心構えを説く。

社内通訳は計画的育成を

プロ通訳は使わなくても社内通訳を置く日系企業は多い。瓜生・糸賀アドバイザリーサービスベトナムの代表として日系企業を支援する伏原さんは、「社内通訳は2~3年先を見据えて育てて欲しい」と提唱する。

現状の日越関係において、「通訳は誰しもが求めるインフラ」。だが、本当の意味で両者の真意を伝える存在になるには、日本人経営者とベトナム人従業員間のルーティン業務だけでは不十分との指摘だ。通訳者の自助努力にのみ頼るのではなく、「両国についてより幅広い知識を持つことができるよう多分野で経験を積ませて欲しい」と訴えている。

ページの先頭へ