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NNAベトナムが行く! ベトナムの「ホント」のところ

日本帰りの技能実習生 課題は受け皿作り
vol.9


「ニホンジンですか?」。飲食店の呼び込みやタクシーの運転手に、時には田舎の町でも通りすがりに日本語で話しかけられる。経験上、大抵が日本で3年程度を過ごした元「技能実習生」たちだ。日本に送り出されるベトナム人実習生は過去3年間で3倍に伸び、昨年は約3万人に達した 。

日系での活躍はごく一部

ハノイの「さくらクリーニング」 店長のハーさん

ハノイの「さくらクリーニング」
店長のハーさん

「ダウンジャケットは水洗いが良いと言います。お客さんにちゃんと説明します」。ハノイのイオンモールに昨年オープンした「さくらクリーニング」店長、ハーさんは実習生として過ごした1年間の頑張りが認められて店を任された。親会社のリヴァイブ(宮城県仙台市)は、今後も日本式の丁寧なクリーニングを教えた実習生をベトナムで雇用する方針だ。「アイロンと洗濯は楽しいです」。20代前半のハー店長ははにかむ。

ただ、さくらクリーニングのような例は一部に限られている。3月に元実習生の就職フェアをホーチミン市で開催したジー・エー・コンサルタンツ・ベトナムによれば、「呼び掛けたうちの4分の1が参加した。残る4分の3のうち半数程度は田舎の故郷で暮らしている」。ベトナム帰国後の進路について統計的なデータはないが、日本で学んだ技術を日系企業で生かす元実習生は少ないようだ。

そもそも日本での受け入れ先のうち、ベトナムに展開する企業は少数。このため日本で学んだ技術をそのまま使えるわけではない。日本語も「流ちょうに話せる帰国者は1割程度。2~3割はほとんど話せない」との指摘もある。即戦力を求める企業側との間にミスマッチが残る。

日本帰りの採用が広まらないのは、個々の実習生の意識にも関係がありそうだ。農村に行くと日本で働いてためたお金で建てた「実習生御殿」を見ることがある。実習生制度は、日本の進んだ技能や知識を教えて母国の発展を促す「人づくり」が趣旨 だが、ベトナム人にとっては日本の賃金水準はやはり魅力だ。

板金加工の工場長に抜擢

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もちろん志ある実習生もいる。ロンアン省で精密板金加工を手掛けるTATは、京都の親会社で受け入れた実習生ナムさんをベトナム進出に合わせて工場長に据えた。TATの細見順也社長は、「来日後も自分で日本語を勉強し、仕事ぶりもまじめだった」と振り返る。実習生の送り出し機関エスハイ(ホーチミン市)でも、出国前に「日本に行くことが目標ではない」と指導して、帰国後の人生設計も含めた教育に力を入れる 。

在ベトナム日本大使館も対策に乗り出した。3月には元実習生を対象とした就職セミナーを開催し、日系企業との間で面接を取り持った。実習生制度には、人手不足に悩む日本側の事情もあり問題解決は容易でないが、官民の取り組みが動き出している。

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