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HSBCが見たベトナムの経済

GDP成長率予測を引き下げ
安定成長への明るい兆しも


HSBCはベトナムの今年と2017年のGDP成長率予測を引き下げました。金融引締め政策により国内需要が縮小すると思われますが、成長率の鈍化でしばらくは低インフレの状態が維持される見込みです。

今年第1四半期のベトナムの経済成長率は前年同期比5.6%で、予測よりはるかに低くなりました。減速の要因は、第1次産業の生産量が前年同期比で1.1%減少したことにあると考えられます。この成長率はここ数年で最も低い数字で、ベトナム全土で農作物に深刻な被害を及ぼし、供給不足不安を引き起こしたエルニーニョ現象の影響によるものでしょう。

ベトナム経済においてGDP全体の13%を占め、ASEAN諸国の中で最も高い割合を持つベトナムの農産業の重要性は、決して低いものではありません。加えて、全国の労働人口の約半分を占める農業従事者の収入・消費が減少したことで、製造業やサービス業に悪影響が出ています。

成長鈍化の背景

結果として、HSBCは2016年のGDP成長率予測を、6.7%から6.3%に下方修正しました。第1四半期で経済成長の足かせとなった各要素は、しばらく内在すると思われます。今期は農業の不振に伴い、建設業、不動産と金融サービス業の成長が顕著に減少しました。

建設業界が低迷した理由は、公共投資の鈍化・減少の影響によるもので、背景には政府の予算制約があります。また、不動産向け貸付の規制強化により、不動産業と金融サービス業には著しい鈍化が見られます。ただ、行政的な引締め政策は過熱な投資を防ぐことが目的であり、今後は2015年のように投資が緩和されると思われます。

このようなことからHSBCは短期的な国内需要の縮小を見込み、2017年のGDP成長率予測においても、6.8%から6.6%に引き下げました。

持続可能な安定成長へ

その一方で明るい材料もあります。根強いFDI資金の流入があり、かつ資金流出の低下への期待で、ベトナムの2016年の収支全体のバランスが黒字になれば、外的なショックへの耐性がまだ弱いとされるベトナム国家銀行(中央銀行)の外貨準備高が増加するかもしれません。

一方、不動産向けの貸付抑制と信用の質を重視した政策は、銀行業の新たなリスクを防止することが期待されます。金融全体の不良債権は2012年9月の5%から、2015年12月の2.5%へと大幅に改善されています。しかし、銀行の不良債権を買い取る国営のベトナム資産管理会社により監督される、不良債権処理のプロセスはかなりの時間がかかるため、ベトナムの金融システムは今でも「脆弱性」を抱えていると言えるでしょう。

成長鈍化の予測に加え、世界的な物価安定もあり、2016年のインフレ率は低水準に抑えられる見込みです。HSBCは2016年の総合CPI上昇率予測を2.9%から1.6%に下方修正しました。また、金利引上げ時期を12ヶ月間延長し、2017年第3四半期になると予測しています。総合インフレ率に関しては、2017年前半の終わり頃が4%、年末は政府が設定した目標の上限(5%)に達成すると見込まれます。

より堅固な基盤を築く

経済成長率は鈍化していても、HSBCの最新の予測によると、ベトナムはASEAN域内で最も成長率の高い国になりそうです。ベトナムの輸出は引き続き世界市場の大きなシェアを占め、中期的には堅実な成長を確保できると思われます。また、結論を出すにはまだ早いですが、国家銀行の最新の動向から見ると、マクロ経済の安定性に向けて徐々に動き出しているように思われます。

持続可能な回復が確保でき、ベトナムの長期的な成長基盤を強固にするためには、各行政機関がより幅広い改革を遂行する必要があります。そのためには、政策における慎重なアプローチが欠かせません。

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