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NNAベトナムが行く! ベトナムの「ホント」のところ

日本式医療をHCMCから 円借款で最新病院
Vol. 10


日本がベトナム戦争期から支援しているチョーライ病院(ホーチミン市5区)の昼下がり。入院病棟の廊下にはびっちりと簡易ベッドが敷き詰められ、点滴を打つ患者たちが男女の区別なく横たわる。階段の踊り場にまで家族が座るゴザが広がり、クーラーがない病室内にはベッドが縦横に並んで、足を踏み入れる隙間を見つけるのも難しい。気温35度を超える中、家族らは団扇を仰ぎ、添い寝し、患者の体を拭く。入院患者数は定員を約4割上回り、1つのベッドを複数の患者が共有しているという。南部随一の医療機関は野戦病院さながらだ。

ベトナムの公的医療は、村落や郡、省市、中央レベルの三層構造を取る。保健省直轄のチョーライ病院やハノイのバクマイ病院などが、下位の医療機関で対応できない患者を受け入れるシステムだが、地域の診療所などは医療機器も人員も不足しており、都市部の大病院に患者が押し寄せている。

第2チョーライを建設

チョーライ病院_サブ

ホーチミン市にあるチョーライ病院

混雑は待ち時間の長さやサービス低下をもたらすだけではない。感染症に配慮した設計や設備がなければ院内感染をもたらす。チョーライ病院に最近家族が入院したという男性によれば、病室には家族を含め16人以上が常時滞在していたとして、衛生状態の改善を訴える。また、2014年にホーチミン市の他の病院で行われた調査では、医療従事者の半数余りが「患者と接する前に手を洗わない」、または「正しい方法で洗っていない」ことが分かっている。

日本は遠隔地の病院支援や母子手帳の普及など、さまざまな角度でベトナムの医療を支援してきたが、現在の目玉はホーチミン市ビンチャイン郡で計画中の「日越友好病院」(チョーライ第2病院)だ。円借款約286億円が投じられ、地上10階建てで33診療科・1000病床からなる総合病院が、2020年に完成予定だ。新たな病院ができればチョーライ病院の混雑緩和が期待される。

日越友好病院では、日本が培ってきたノウハウを生かし、設計や患者の導線を工夫して院内感染を防ぐほか、バリアフリーも取り入れられる見込みだ。国際協力機構(JICA)ベトナム事務所の増田親弘次長は、「病院を患者中心に」と狙いを語る。電子カルテなどを含むICTの導入で待ち時間の短縮も図る。

課題は地域の底上げ

ベトナム統計総局(GSO)及び厚生労働省

出所:ベトナム統計総局(GSO)及び厚生労働省

同病院の施設や医療機器などには日本の技術が活用される。企業関係者からは、「ベトナムの代表的な病院で日本の最新機器に触れてもらえば、さらなる普及につがなる」とビジネスチャンスを期待する声も上がる。ただそのためには、地域の医療水準の底上げが欠かせない。医師や看護師の人口当たりの数は日本と比べて圧倒的に少なく、そもそも国家資格もないため技術にばらつきがある。高度な医療機器を使いこなせるようになるためにも、レベルの平準化が必要だ。

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