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HSBCが見たベトナムの経済

FDIが牽引する製造業
インフレ率は管理可能な水準に Vol. 17


今年4月の製造業購買担当者指数(PMI)は、ベトナム製造業の競争力上昇の証とも言えるでしょう。日本経済新聞社が発表したベトナム4月の日経PMIは52.3で、前月の50.7から急増し、直近9ヶ月で最も高い値となります。PMIの内訳をみても、生産指数を始め、新規輸出受注から雇用まで、広範囲な改善が確認できます。

ベトナム2016年第1四半期の、製造業のGDPベース生産量は季調済前期比0.1%減で、2012年3月以来初の低下を記録し、足踏み状態となっていました。しかし、4月のPMI指数上昇は第2四半期の回復の兆しを見せました。

製造業の生産拡大はこの先、数ヵ月続くと考えられます。PMIの新規受注指数から在庫指数を引いた値は生産の先行指数ですが、高水準を維持しています。また、雇用者指数の改善は企業の強気な景気見通しを反映しており、今後の生産活動の拡大を示唆する内容です。

実を結ぶFDI

ベトナムの製造業PMIの反発は輸出が更に減速する多くのアジア諸国とは対照的です。ベトナム製造業の堅調は継続的な新規投資を反映しています。韓国、マレーシアからの多大な資金流入のおかげで、ベトナム2015年のFDI支出総額は145億ドルを記録しました。

2016年初から4月現在まで、韓国からベトナムへの登録FDI総額は25億USDに達し、昨年通年の韓国の登録FDI総額の90%を超え、引き続きベトナムの最大投資国となっています。

年初から3月までのFDI支出総額は35億ドル増となり、年初来累計で前年比15%増を記録しました。新たな工場が相次いで操業を開始すると共に、外需低迷にもかかわらず生産量は引き続き上昇し、ベトナム製造業は近隣諸国をアウトパフォームし続けると見られます。

4月の年初来累計輸出額は前年同期比6%増で、3月の4.1%増を上回りました。前年同時期と比較すると、この成長率はやや弱めですが、モメンタム自体は大幅に改善しています。部品を含めた4月のスマートフォンの年初来出荷台数は前年比25%増で、前年同時期の13.6%を上回り、引き続き輸出の原動力になっています。

2016年第1四半期の強い成長のI因は、ベトナム進出の外資最大手であるSamsungの新商品発表ですが、地域内諸国の製造業の勢い鈍化に反して、ベトナムは新規投資FDIのおかげで、より堅固で持続可能な景気回復に向かっています。

FDIは輸出の回復を促進し、伸び率を2015年の7.9%から今年の10.1%に引き上げると期待されます。エルニーニョ現象の影響による第ー次産業の悪化に対して、製造業の回復は成長を支えると期待されます。

インフレリスクは軽減

ー方、4月は商品価格の下落がもたらしたデフレ圧力が弱まっていることが確認されました。たとえば、4月のPMIによると、投入物価格サブインデックスは3.9ポイント上昇し、2014年8月以来最も高い水準に達しました。今後も、持続的に投入物価格指数が加速していくとは思えませんが、原油価格は底を打ったとの見方もあり、ここ2年あまり続いてきた原油安メリットは薄れてきていると言えるでしょう。

インフレ率は管理可能な水準に維持されると見られています。4月の総合インフレ率は前年比+1.9%と6ヶ月連続で上昇しました。しかし、この連続的な上昇は主にエルニーニョ現象に伴うサプライショックに起因する食料価格上昇が原因です。

ー方、コアインフレ率は0.2ポイント増で、1.8%に達しましたが、これは3月の緩和状態からの自律的な反発とみられます。昨年のコアインフレ率は2.0%前後に安定しましたが、2016年もしばらく継続すると期待されます。従って、2017年前半までは、ベトナム国立銀行(中央銀行)は公開市場操作(OMO)レートを現状水準で維持するでしょう。

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