総力特集

Feature


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わずか3年で「日本のビール」を浸透
こだわるのはスピードと品質

 

2011 年11 月にビール工場を竣工後、瞬く間に市場に食い込み、
その地位を確立したサッポロベトナム。
今後は年間生産能力を4 万kl から10 万kl、15 万kl へとアップさせ、
2014 年の売上高を前年比2 倍に増やす計画だ。

 

SAPPORO VIETNAM LTD.
サッポロベトナム 岸 裕文社長

 

第1、第2段階を飛ばしていきなり工場を建設

 

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撮影/大木宏之

「弊社が進出を決定した2009年当時、わずかな個人輸入品を除けば、サッポロビールはベトナムに1本もなかった。取引先は1件もなかった。その一方で工場は2年後に完成する。どうしようかと思いました(笑)」
ビール会社が海外に進出する場合、①事務所を設立して市場調査と販路開拓、②現地のビール会社と提携して自社製品の製造・販売、③自社工場を建設して本格的な製造・販売、となるのが一般的だ。しかしサッポロビールは、いきなり最終段階の工場建設から入った。
「通常の手順では最低で5年、長いと10年かかります。2022年にはアジアで中国に次ぐビール消費国になると目されるベトナムでは、あまりに遅い。そこで、第1、第2段階を飛ばして、工場設立となったのです」
東南アジアでの進出国を探していた岸氏は、2007年12月に初来越した。ローカルレストランで何度も乾杯してビールを飲み交わす若者たちを見て、「この国が一番いい!」と直感したという。ビールを飲む女性の少なさは気になったが、経済発展と共に増える「伸びしろ」と考えた。
2010年2月に着任して、2011年11月に工場が完成。工場を担当した建設チームと並行して、流通・営業チームがレストランや酒屋を回って販路を開拓した。1年半で販売網を作るためだ。
しかし、彼らが名刺を出しても社名はもちろん、業種すらわかってもらえない。持参したのは買収したカナダのスリーマン社で製造したサッポロビール。1本2万VND程度で売ったが、関税もあって輸入価格は6万VND程度。実は大赤字だった。しかも、定め
た「敵」は価格帯が同じハイネケン。相手はベトナムのプレミアムビール市場で圧倒的なシェアを持つ巨人だが、サッポロの知名度は「ゼロ」だ。

 

客を驚かせた「日本流」

 

こうした中で同社のPR戦略を担ったのが「プロモーションガール」。ご存知のようにベトナムでは、ビール会社別にそれぞれのユニフォームを着た女性が、レストランでお客に自社ビールを勧めている。
同社でも始めたが勝手がわからない。1人、2人と雇って、ベトナム人社員と共に検討し、表情、仕草、説明の仕方などを教え、次第に組織化していった。岸氏が一番大切にしたのは「笑顔とあいさつ」。
「始めた当時はその両方がなく、レストランのテーブルにただビールを置くだけ。これは他社のプロモーションガールも同じでした」
しかし、岸氏の「日本流」は次第に彼女たちを変え、サッポロブランドをベトナムに浸透させていった。例えば、複数社のプロモーションガールがPR合戦を繰り広げるレストランで、「サッポロガール」だけは店員を手伝って料理を運び、後片付けをし、他社のビールを頼まれると笑顔でそれを持ってくる。
常識破りの「おもてなし」に店のマネージャーが驚き、オーナーが驚き、お客がびっくりした。そんな彼女たちの姿を見てお客は次第にサッポロビールをオーダーするようになり、今やサッポロガールは約800人と、ベトナム一のグループへと成長した。
こうした活動と他社にない味わいからサッポロの認知度は確立。現在では、取扱店1店舗当たりの売り上げを伸ばすことと、ビンズオン省などホーチミン市中心部から20〜40㎞の、通勤圏内での認知度向上を図っている。
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「三重苦」の生ビールをベトナムに広めたい

 

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同社は他のビールメーカーが立ち入らない分野にも進出している。それは「樽」。日本料理店を中心に、生ビール用の20l樽を販売しているのだ。しかし、生ビールは実はベトナムでは鬼門。ベトナムには「加熱したものが高級品」という意識があり、生ビールは低価格の「ビアホイ」のイメージとも重なり、おまけに独特の衛生管理が必須となる。いわば三重苦の製品なのだ。
「それでも生ビールをベトナムに広めたいんですよ。なぜって、一番おいしいビールの飲み方ですから。日本料理店で始めて、日本食が好きなベトナム人に広めて、ベトナム人全般に知ってほしいですね」
缶にもこだわりがある。650ml入りのシルバーカップはアルミではなくスチール製。握ってもつぶれない材質と厚みのタンブラー型にして、「見栄っ張りなベトナム人」向けに高級感を出したという。
「ベトナムで作ったサッポロは日本製よりうまい。こんなことをよく言われるんですよ(笑)。もうすぐバドワイザーの工場が設立予定ですが、サッポロは負けませんよ」

 

 

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