総力特集

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2015年のベトナムはGDP成長率が%と絶好調。内需は堅調、海外投資は増加、自由貿易化も促進した。
それでは、2016年はどうなるのか?各界の識者が2015年の総括と2016年の展望を予測する。そして…日系企業への影響とは?

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現状の成長が続く2016年
非関税障壁など注意点も

会員数が800社を超えたJBAH(ホーチミン日本商工会)。昨年は小規模な製造業、サービス業、縫製業や製靴業などの進出傾向があり、またチャイナプラスワンの動きも活発化。今年も経済は緩い右肩上がりの成長を見せるものの、楽観視は禁物と釘を刺す。

南部で増加する進出企業

ホーチミン日本商工会会長
丸紅ベトナム社長

坂上 勉 氏

昨年のベトナム経済は近隣のASEAN諸国と比較して好調とは言えるものの、成長力に陰りが見えるタイ、マレーシア、インドネシアなどと比較した相対的なものだという。その意味ではベトナム経済に一時の勢いはないものの、ホーチミン市並びにその周辺省ではいくつものトピックがあった。

一つは不動産開発の活況だ。地下鉄や高速道路の建設により、主に郊外で大型コンドミニアムなどの建設ラッシュが続いている。もう一つは好調な内需。その例が大型ショッピングモールやコンビニの増加で、近年にない活況を呈している。

「TPPは関税など貿易関係が話題の中心になりがちですが、小売りを初めとする国内での規制緩和にも注目すべきでしょう。既に日系を含めた外資系小売りが、出店を加速させています」

ベトナムでは現在、スーパーマーケットやコンビニエンスストアなどの外資系小売業者に対して、2店舗目以降の出店にENT(エコノミック・ニーズ・テスト)と呼ばれる審査がある。これがTPPの発効から5年後に廃止される予定で、外資系企業の進出増加が確実視されている。

※2015年12月11日現在。正会員、準会員含む

また、現在の電子通信業への外資出資比率は最大で65%、地場銀行へは15%に制限されているが、それが各々75%と20%に引き上げられる予定だ。こうした外資への規制が緩和されるのもTPPの大きな特徴となっている。

また、ベトナム南部において、最近では以下のような日系進出企業が増加しているという。

まず、チャイナプラスワンに加えてTPPを見据えた、縫製業や製靴業など労働集約型産業。同じ製造業でもレンタル工場などを生産拠点とする、小規模な部品メーカーや加工業。最後は法律事務所、人材派遣、教育、コンサルティングなどのサービス業だ。坂上氏は2016年もこの傾向が続くと見ている。

「サービス業では比較的資本金の少ない企業が、ホーチミンを拠点にして既進出日系企業のニーズを取り込んだり、ベトナム人や日本人の内需をターゲットにしてくると思います」

TPPの短期効果は疑問

※各年4月の数値。正会員、準会員含む

坂上氏はTPPやAECにおいて、長期的には経済の活性化につながるものの、短期的にはまだまだ障害は多く、一筋縄ではいかないと想定している。一例を挙げれば、アメリカ向けに輸出される際のエビのダンピング課税などの非関税障壁や、競争力を高めた近隣諸国との競合である。

例えば、TPPにより優位に展開すると目される繊維業においても、素材調達などには制約がある。つまり、調達、製造、輸出までの一気通貫した優遇制度にはなっていない。加えて坂上氏は、製品の買い手である消費者のニーズにも言及する。

「繊維業などは他国より競争力が高まるでしょうが、生産拠点が中国やタイなどからベトナムに移るだけで、消費サイドで見た場合には、需要が急増する訳ではありません。素材・原料の調達も難しく、短期的に効果が出るかは疑問です」

TPPなどのプラスの経済効果は、ベトナムにとって最大の貿易相手国である中国の経済停滞と相殺され、今年のベトナム経済は昨年同様、緩い成長を継続するという。日系企業の進出は増えるだろうが、円安の影響もあり、製造業が急増するとは思えない。実際、今年のJBAH新規加入企業数は、昨年を下回り、ここ3年間増加傾向にあった会員数増加も鈍化した。

十分な利益に時間が必要

※2015年12月現在のHP等の数値。法人会員のみ

それでも、ベトナムを有望国と見て、進出を考える日系企業は多い。将来性が豊かなのは間違いではないものの、「ビジネスで十分な利益が出るまで時間がかかる国」と坂上氏は語る。

例えば、物価が安いことから、優秀で安価な労働力がベトナムの魅力となっている。その反面、商品の単価を安くしなければ売れないので、先進国基準での大規模な利益は出しにくい。また、将来の成長は見込めるが、現状の市場規模は多くの分野でまだまだ小さく、他の外資系企業を含めた競合相手も多い。商習慣が異なり、言語も特殊なため、この国のビジネスで重視される人脈やネットワークを築くのに時間を要する。ビジネスを軌道に乗せるまでには、長期的なプランが大切になりそうだ。

「ベトナムは多くの人口を持ち、国民の平均年齢も若い新興成長国だと期待する人もいますが、ここでのビジネスは利益が出るまで時間がかかるのが特徴です。JBAHでも、日本人駐在員の引き上げや出資売却などで退会する企業も出始めており、楽観視は禁物です」

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