総力特集

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強度な農薬を乱使用して育てた肉、野菜、魚。原料や原産地が不明な食材や加工食品。
多くのベトナム人がこうした「食」に危機感を感じ、高価でも確かな品質を選ぼうと動き出した。
「食の安全」は既にニッチ市場ではない。

 

地場のGolden Pig社から出資を請われて進出した日本ハム。日本の品質管理をベトナムで展開し、5年で売上は2倍となり、今年4月には第2工場がハノイに竣工する予定。生産が追い付かない状態だ。

買収後に事業分野を拡大

日本ハムベトナムの前身、Golden Pig社は高品質のハムやソーセージを高級ホテルのビュッフェに提供する、評価の高いローカル企業だった。しかし、リーマンショックで経営が悪化し、出資を仰いだのが日本ハム本社。2011年に83%の株式を取得して連結子会社としたのが、現在のNH FOODS VIETNAMである。日本ハムグループは世界各地に拠点を持っており、食文化の近いベトナムへの進出は以前から考えていたという。

「Golden Pig社は高級ホテルや航空会社の機内食向けにハムやソーセージを販売していましたが、弊社はスーパー等の量販店、外食チェーンへの販売を開始し、事業を拡大してきました」(森氏)

工場内での作業

高級ホテルはハムやソーセージのオーダーメイドが主で、長さの違いなども合わせると全商品数は400種類以上。5つ星ホテルでのシェアは7~8割にもなるそうだ。

外食チェーン、コンビニへの販売はカツやから揚げ、コンビニで販売するサンドイッチの具材など。近年の成長分野であり、特にファストフード店向けの食材が加速度的に増えているという。

2015年から外資系企業の飲食業への進出が独資で可能になったこと、若者層を中心にファストフード店に親しみ始めたことなどから、同社では今後の伸びも期待できるとしている。

また、当初はスーパーやコンビニに販売するコンシューマー向け商品として、常温ソーセージを予定していたが、日本ハムベトナム社長の判断で、低温冷蔵が必要となるチルドのハム・ソーセージへの参入に変更した。常温ソーセージとは日本での魚肉ソーセージのような商品だ。しかし、今後はベトナム国内の経済発展に伴い、日本同様に常温ソーセージの需要は衰退していくだろうと日本ハムベトナムの社長は考えたという。

「進出時は常温ソーセージが売れていましたが、現在はチルド市場が拡大しており、弊社の売上も右肩上がりです。実際チルドのほうが美味しいので、ベトナムの消費者も常温ソーセージには戻れないと感じています」(森氏)

NH FOODS VIETNAMのハムやソーセージ

Golden Pig社は元々品質が高かったので、レシピや味は変更していない。特にサラミの製造には時間を掛けている。日本の場合は加熱で熟成し2~3週間だが、ベトナムでは自然乾燥なので短くて1ヶ月、大きなものだと3ヶ月もかかるという。

「長期間で作るのは日本では珍しく、視察が来るほどです」(森氏)

日本から視察に来た社員が、「下手するとうちのより旨い」と語るほどだそうだ。 上記のような戦略が成功して、売上は会社全体で毎年115~120%の成長。昨年までの5年間で進出時の約2倍に増加した。

多面的な品質管理

品質管理は徹底している。日本ハム本社からの品質監査を年に数回行っており、日本レベルの品質管理を維持。食品の製造・加工工程における国際的な衛生管理手法である「HACCP」も取得した。また、品質を落とさないためにフランス人技術者が1年に約1ヶ月間滞在し、レシピ通りの製法か、原料の鮮度は保たれているかなどの細かな指導を現場のスタッフたちに行う。

「お客様である大手ファストフード店や航空会社も1年に1~2回、弊社工場で厳しく監査をしており、こうした外からの目も品質の向上につながっています。以前は工場内で着用している帽子やマスクがずれているスタッフもいましたが、今は全くありません」(風間氏)

現在の製造工場はロンアン省にあるが、販売数量の増加に伴い、ハノイ近郊のフンエン省に第2工場を建設中。ベトナム北部でニーズ増からこの場所に決めたという。昨年10月に建設を着工し、今年8月からの稼働を予定している。敷地面積、建屋はロンアン工場と同規模で、月間250tまで製造可能。新工場ではハムとソーセージ以外に、加工食品の製造、販売も強化していく予定である。

店頭で販売されている様子

森氏は赴任して3年ほどだが、その間だけでもベトナムの食事情の変化がわかるという。代表的なのはやはりスーパーやコンビニなど近代流通の拡大。多くのベトナム人は、現地市場で吊り下げて売られている肉が新鮮でおいしいものと認識していた。しかし、最近では養豚への成長剤の使用がニュース等で取り上げられるようになり、食の安全への意識が高まり、近代流通にシフトしている。同社の売上上昇の理由は企業努力やベトナム人の所得増以外に、こうした食に対する消費者の変化もあるだろう。

「今後は日本の冷凍ピザや中華名菜のような加工食品を製造したり、カナダやヨーロッパから豚肉、オーストラリアやアメリカからの牛肉の輸入等、食肉事業の拡大をしていきたいですね」(森氏)

 

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