総力特集

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ビジネス成否のカギとなるのが、提携・合弁先となる地場のベトナム企業だ。良いパートナーシップが組めれば事業は好転し、逆なら頓挫もあり得る。では、どんな企業をどう探せばよいのか? 事業実現までのカギとは?多業種の企業に本音を聞いた。

 

日本企業初と言われる「街づくりパッケージの海外輸出」を、南部ビンズン省で実践する東京急行電鉄。合弁相手は同地で多くの実績を持つBECAMEX IDC CORPORATIONだ。進出5年でその全体像が見えてきた。

思わぬ出会いから合弁がスタート

8兆6000億VND(当時のレートで約330億円)という資本金で、2012年3月に設立されたBECAMEX TOKYU。東京急行電鉄(東急電鉄)とBECAMEX IDC CORPORATION(BECAMEX IDC)の合弁会社だ。総面積約1000haのビンズン新都市で、街区面積約110ha(敷地面積約71 ha)を対象に「東急ビンズンガーデンシティ」を展開している。「GDPの安定的な成長、平均年齢の若さ、9千万人以上の人口を持つベトナムでも、特にビンズン省はGDPの成長率が全国トップクラスで、工業団地が多く、立地も良い。今後の発展も期待できます」

パートナー企業のBECAMEX IDCはビンズン省でミーフックやVSIPの工業団地、住宅、道路インフラなどを開発してきた国営企業。地方行政からのサポートがあり、各種手続きや政府機関への申請などがスムーズとなるメリットもあった。いわば唯一無二の相手だが、提携は思わぬきっかけによる。

BECAMEX IDCは日本で毎年工業団地の誘致セミナーなどを開催しており、同社の首脳陣が来日した2011年6月のセミナーで、東急電鉄を紹介される。その折に街づくりの事例が見たいとの依頼があり、東急電鉄は二子玉川や多摩田園都市などを案内。彼らは緑豊かな街並みや住宅環境、便利な商業施設、電車やバスでの移動などに感銘を受け、本格的な協議が始まったという。

SORA gardens前で行われている朝市

「ベカメックスIDCさんとの出会いがあったからビンズン省に進出したとも言えますね。我々がノウハウを提供する形で事業がスタートしました」

同業種で最良のパートナーであるが、品質とコストの面では話し合うこともある。東急電鉄が目指す「日本品質の街づくり」のためには材料や取引先などが高品質・高価格となるケースもあり、その折り合いを付けているのだ。

ただ、それが事業の支障にならないことは、以下の事業推進からも明らかだ。

MIDORI PARKの完成予想図

住宅、商業施設、バス 今後は第2の展開へ

最初のプロジェクトは高層コンドミニアムの「SORA gardens」。敷地面積約9000㎡の中に24階建ての2棟、計約400戸が2015年3月に竣工した。ほぼ完売で、うち約40戸のサービスアパートも稼働率は9割近いという。住人はベトナム人家族が最も多く、周辺の工業団地に勤める日本、韓国、台湾系企業などの駐在員も多く住む。ホーチミン市までの無料バスの他、購入者への内装や賃貸先紹介などのワンストップサービスも好評だ。

2番目は省庁舎の目の前に位置する商業施設「hikari」。約2000㎡の規模に和、中、越のレストランやフードコート、カフェ、コンビニ(ファミリーマート)を誘致。昼だけでなく夜の接待に利用される店もあり、今後は韓国系など飲食店の幅を広げる予定だ。

ベカメックス東急バス

3番目は公共交通機関としての「ベカメックス東急バス」。進出当初からビンズン省と進めてきたプロジェクトで、バイクからの「モーダルシフト」を掲げて2014年12月に運行を開始した。主に旧省都のトゥーヤモット市街と新省都のビンズン新都市を結ぶルートなど計6路線で、1日約160便。全車両にクーラーとWifiを備え、定期券はFeliCaを使ったICTパスだ。

「運行・安全管理や整備はもちろん、運転手の研修などにも東急のノウハウを導入しています。新都市内には5つの学校があるので学生さんの利用も多く、客数は徐々に伸びています」

4番目は「MIDORI PARK」。第1期としてタウンハウス型低層住宅の計42戸が今年5月に完成予定(将来は高層住宅と合わせ約9000戸を予定)で、特徴は敷地面積の56%という緑化率とセキュリティ。脇を流れる川を埋めて人工のきれいな水辺を作り、約40種類の木や花を植え、街区全体に24時間のセキュリティシステムを導入した。

「成功と言えるまでにはまだまだ時間がかかりますが、我々にはビルや家を建てるだけでなく、面的な街を作る企業のDNAがあります」

このように住宅、商業施設、バスが事業の柱だが、今後はさらなる街づくりのため、スーパー、教育施設、医療機関、オフィスなども誘致する予定で、街づくりには東急電鉄だけでなく、地元や企業、政府関係者など多くの支援が欠かせないと言う。

企業では、例えばアプリ開発などのIT企業。作業場所は限定されないので、緑が多い中、割安の広々としたオフィスで創造性を発揮できる。また、大消費地のホーチミン市に近い利点を生かした農業や食品関係の研究開発拠点を設け、研究者を集める。住民が増えれば各種サービス業へのニーズも高まるだろう。

「日本の高度成長に合わせて東急電鉄が発展してきたような過程を、まさに今、我々が挑戦しているのだと感じています」

 

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