総力特集

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前年比30%増で伸び続けるベトナムのEC(電子商取引)マーケット。市場規模は40億USDと日本の30分の1程度だが、2022年までに100億USDになるという試算もある。一方、品質、配送時間、キャンセルといった課題も多い。今と未来を業界の専門家たちに聞いた。

 

2010年に設立され、書籍販売からスタートしたECサイト「Tiki.vn」。現在では約30万種類、2500ブランドを販売し、信頼感がある総合ECサイトとなった。創業者でありCEOのMr. Son TranがベトナムのECを語る。

7日間は返品可能 信頼関係が大切

「2016年6月の市場調査で、オンラインショッピングでの顧客の一番の関心は『信頼関係』でした。私はまさに、互いに信頼されるECプラットフォームを作りたいと思ったのです」

最初に販売したのは書籍。これを配送後7日間までは返品可能とした。十分に数冊は読める期間なので、読了後の返品も考えられたが、「お客を信じることが何より大切」とのこと。このサービスが評判となって現在の返品期間は15日間、靴などの商品は30日間となっている。

幅広い顧客のニーズに応じて、書籍からIT機器、日用品、アパレル、オンライン百貨店まで広げ、現在は30万商品と2500ブランドを提供している。

創業以来7年間、同社は毎年130~190%の伸びで成長しており、「ベトナムのEC事業者で書籍だけなら売上は1位、全ての商品を含めると2位」とMr. Sonは語る。

社内に置かれた賞状やオリジナルグッズ

「ECでの購入は便利で、品揃えが豊富で、価格も安い。まるで大きなショッピングセンターのようなものですが、土地代はかからない(笑)。ベトナムの実店舗の成長は年に10%ですが、ECは33%です」

売れているのはスマートフォン、パソコン、テレビなどのIT機器で、シャンプー、ヘアケア製品、コスメ、ビューティなどの生活日用品も人気があるという。ただ、販売するのは「本物の商品だけ」であり、中古品とフェイク(偽物)は流通させないと決めている。

顧客との信頼関係作りを基本としているため、特に注力しているのはカスタマーサービスだ。顧客の推奨レベルを測る指標にNPS(ネット・プロモーター・スコア)があるが、同社の調査で「推薦する」が約90ポイントで「しない」が約10ポイントなのでNPSは80ポイント程度。これはかなり高い数字で、顧客の信頼感がわかるという。

「お客様はTikiが販売する商品の品質やTikiの顧客サービスに満足し、いつもTikiへ戻ってきてくれます。TikiのNPSは毎月81~83ポイントに達しています」

また、2016年のデータで、注文から商品到着まで平均配送時間は2.3日。ホーチミン市内なら2日で届くという。これはベトナムのEC事業者では早い方で、今後は当日か翌日の配送にしたいと考えている。

「返品・交換率は1%です。これはどこの販売店、オンラインでもオフラインでも、『夢』の数字だと思います。確かなものを販売し、配送が早くて、カスタマーサービスがしっかりしていれば、キャンセルする理由はないと思います」

続くEC企業への出資 今後は淘汰も

Tiki.vnは住友商事やサイバーエージェントベンチャーズなどから出資を受けており、昨年は無料メッセージアプリ「Zalo」を運営するVNGコーポレーションが約1700万USDを出資した。これは同社に限ったことではなく、数多くのECサイトには他業界の大手企業が資金を投入している。

「ベトナムでは小売全体に占めるECの割合がまだ1%です。中国は10%、台湾は17%、韓国は20%あり、若い人が多いこともあってまだまだ伸びる余地がある。欧米や日本もそうですがオフラインからオンラインへは自然の流れであり、我々はこれを『止まらない列車』と呼んでいます」

Tiki.vnの書籍の画面

現在は生活日用品が良く売れているが、Mr. Sonは将来性についても心配はないという。例えば最初にシャンプーを買い、それが良い購入経験になれば信頼感が上がり、次はより高額な商品へと進む。そして、躊躇しないでテレビを買うようになるという。

Googleと投資会社Temasekの共同調査によると、2015~2025年にベトナムのEC市場は毎年33~35%で成長し、伝統的な小売業の3倍になるという結果だ。

そのためには多くのプレイヤーに参入してほしいが、今後は淘汰が始まるとも見ている。小規模サイトや専門サイトは徐々に成長が鈍化し、それはカテゴリーや商品数が少なくては顧客をキープするのが難しいからだという。例えば、服の画面を見ていてシャンプーが欲しくなれば、お客は別のサイトにアクセスせざるを得ないといった理由だ

「つまり、お客様は離れてしまいます。仮に将来、車を販売する専門サイトができても、Tikiで車を売るようになれば、そのサイトはなくなるかもしれません。5年後には大きなサイトしか生き残れなくなるでしょう。日本でも楽天とアマゾンが主流ですよね」

Tiki.vnの現在の従業員数は時期によって変わるが400~500人、配送チームは1000人以上。ハノイに1つ、ホーチミン市に2つある倉庫の面積は合計で約1万㎡だ。 ちなみに社名のTikiというネーミングは、2つの単語の最初の2文字を組み合わせたものとなっている。それは「Tiet Kiem」(節約)と「Tim Kiem」(検索)だ。

 

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