総力特集

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前年比30%増で伸び続けるベトナムのEC(電子商取引)マーケット。市場規模は40億USDと日本の30分の1程度だが、2022年までに100億USDになるという試算もある。一方、品質、配送時間、キャンセルといった課題も多い。今と未来を業界の専門家たちに聞いた。

 

ベトナムの様々な動向をネットのリサーチで探る調査会社Asia Plus。EC市場についても独自の調査を続けており、一般消費者の生の声を集めている。将来性は高いものの解決すべき課題が少なくないという。

外資も大手も参入 盛り上がる消費者

「EC市場は前年比30~40%で成長しています。弊社の調査では、売れ筋商品は男性ならスマホなどのIT機器とファッション、女性はファッション、台所用品、化粧品です」

EC及びFacebookShopping利用率

ECが活用される理由は市価より割安なこともあるが、個人経営の小規模店舗が多いベトナムにおいては、圧倒的な品数が魅力だという。実際、ベトナム電子商取引協会によれば国民のインターネットユーザーの65%がオンラインで買い物をしており、Asia Plusの調査でも都市部のインターネットユーザーの67%はECを利用したことがあるという。

ECを利用する理由(複数回答)

人気のECサイトは「東南アジアのAmazon」とも言われる「Lazada」。豊富な品揃えとプロモーションの多さが特徴で、各種調査でもベトナムで一番人気となっている。ベトナム発では既に紹介した2010年創業の「Tiki.vn」が根強い人気を誇る。大手企業も参入しており、Vingroupの「adayroi.com」は総合企業のメリットを生かして生活用品から不動産までを扱い、FTPは売買仲介の場としてマーケットプレイス「Sendo.vn」を展開している。

「ベトナムで個社のサイト販売よりECサイトの伸びが大きいのは、企業HPへのアクセスの少なさや認知度の低さが原因でしょう。ただ、スマホやPCのチェーン店であるthegioididongはEC販売でも好調ですし、ZARAなど国際的にサイト販売を展開するブランド力のある企業も成功すると思いますね」

Facebookを使った売買も盛んなのがベトナムの特徴だ。小規模店舗がネット販売する場合と個人間の売買があり、メッセンジャーでやり取りし、支払いは銀行振込で、確認できたら自分で届けたり、アルバイトに配送を頼む仕組が主流という。

小売店ではFBで宣伝し、EC販売も始めて、相乗効果で実店舗への来客が増えるなどのケースも。一方の個人では自分でデザインした服を売るなどもあるが、海外で購入したアパレルや化粧品などのハンドキャリー品を販売することが多いようだ。

高いキャンセル率 今後は差別化も

このように消費者の利用は拡大の一途だが、「儲かっているかと聞かれてYesと答えるEC事業者はかなり少ないはず」と黒川氏。大きな理由は単価の安い商品が多いことで、有名サイトの女性服を見ても、10万VND以下の商品がずらりと並んでいる。主なユーザーは若者なので、低価格な商品しか買わない(買えない)人が多く、売れるほどに手間は増え、売上に対するオペレーションコストが上がっていくというジレンマがあるという。

1つ当たりの注文の出費額 単位:VND

もう一つの理由はキャンセル率の高さで、これもオペレーションコストを押し上げている。Asia Plusの昨年の調査では35%がキャンセルの経験者。「とりあえず注文」してしまう人が多いことと、クレジットカード決算でなく現金代引きが主流なことも背景にありそうだ。

「キャンセル防止のため、注文受付後に電話やSNSで確認するEC事業者が多いのですが、商品到着までにより安い商品を見つけてキャンセルしたり、到着時にその場で開封し、写真と違うなどとお金を払わないケースもありますね」

ECの支払方法

以前は不良品も多かったので、消費者がECにまだ不信感を持っていることもあるが、代引きだから起こり得ることだ。また、配送時間は2~3日が一般的なので、先進国と比べると遅く、注文者に「類似商品を考える時間」を与えているようだ。

「クレジットカードが普及すればキャンセル率は下がるでしょうが、Fintechを利用したモバイル決算などがその前に広がると思います」

今後は配送やキャンセルなど問題は徐々に改善され、「市場は30~40%で伸び続けると思う」。根拠は小売市場全体におけるEC購買の割合だ。多くの調査期間の発表があるが、アメリカ7%、日本5%、中国13%などに比べてベトナムは2%程度であり、成長の期待値が非常に高い。この将来性を買ってEC事業者に投資をする企業も数多くある。

「最近は家電製品なども売れるようになりLazadaの関係者と話したら、エアコンが順調に伸びているとのことです。設置まで含めたサポートが好評のようで、今後は差別化も進むでしょう」

一つはブランド化。不良品などの問題もあって、「信頼できるECサイト」という地位を確立できる大手事業者は有利だろう。また、ブランド品に特化した「Leflair」などの専門サイトも登場し始め、adayroi.comが生鮮食料品を始めれば強みが出るという。全国にあるコンビニのVinmartから直接配送するビジネスモデルだ。

「会員に特別なサービスや割引を提供するなどでの、優良顧客の囲込みも大事ですね。ベトナムではこの囲込みがまだできていないですから。ただ、市場が活況となり、購入の頻度や金額が上がっても、EC事業者が安定した利益を出せるのは5年先だと思います」

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