総力特集

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年間30%の成長で伸び、2016年は20億ドル規模に達したと言われるベトナムの化粧品市場。その9割が海外ブランドという特徴を持ち、女性の化粧意識の高まりや収入増に合わせて、商品数も参入企業も激増している。市場動向と各社の戦略について、日、韓、越、英の有名ブランドに取材した。

 

ベトナムの老舗化粧品メーカーであるSAIGON COSMETICS。ノンラーをかぶったアオザイ少女のボトルの香水「Miss Saigon」は同社の代表作だ。9割が海外ブランドと言われるベトナム化粧品市場で、本格的な巻き返しを図ろうとしている。

国産初のシャンプー開発 イベントでは新香水も

1975年までIMORTEL社だったが、その後社名が第2化粧品工場となり、1990年にSAIGON COSMETICS CORPORATION(SCC)へ。同じ1990年に発売した「Miss Saigon」が大ヒットし、少女のボトルはバージョンアップを重ねながら顧客を獲得。現在ではベトナム土産の定番となると共に、多くの国に輸出されている。

「中国人がベトナム旅行のお土産に買うようになったのがヒットのきっかけです。フランス輸入の素材で高級感があり、安全安心。次第に使う人が増えて中国で大人気になり、世界へと広がっていきました」

同社の商品は大きく3つに分かれ、ひとつは家庭用清掃用品、2つ目はボディケアで、シャンプーやハンドウォッシュなど。特に現在はオーガニックシャンプーの「Fresh Bo Ket」は、1987年に発売されたベトナム初の国産のシャンプーという。そして最後がMiss Saigon Eleganceなどの香水だ。


Cindy(右)とAroma Link

Miss Vietnam

今年6月にホーチミン市で開催された化粧品のイベント「Mekong Beauty Show」に、同社は2017年末に発売予定の「Miss Saigon The Essence」を出展した。

伝統的な「Miss Saigon Elegance」のグレードアップ版で、時代のトレンドに合わせた。こちらもフランス輸入の高級素材で作られ、香水業界で著名な2社との共同開発に3年を掛けたという。

約30年の間に他の多くの香水も開発し、顧客を開拓してきた。一番人気は18~40歳の女性がデイリーで使う「Cindy」。「Aroma Link」は天然素材が特徴で、女性向けと男性向けも。12~25歳向けのデイリーユースには「Fantasy」がある。

これらは小売店やスーパーなどで購入できるが、SCCのショールームや正規代理店、ECでしか買えないのが2011年に発売された「Miss Vietnam」だ。南部、中部、北部の香りがあり、ボトルは有名なMinh Long社のセラミックで、表面には金やプラチナを使った手描きの模様が描かれている。高価なこともあって富裕層の中高年に人気で、贈答用などにも使われる高級品だ。

「Miss Saigonは模造品も作られましたが、Miss Vietnamは高級セラミックと手描き模様で偽造が難しく、今後はMiss Saigonにも模造品対策を施す予定です」

海外勢に勝つ施策は 「ブランドを作る」こと

SCCの売上の割合はおよそ清掃用品が10%、ボディケアが30%、香水が60%で、特に近年は香水が伸びて、この4年で売上げが2倍になったそうだ。

「ベトナム人が化粧品に使う金額は1ヶ月に10USD程度ですが、周辺諸国は40~50USD。ただ、その金額は上がりつつあり、化粧品市場は拡大しています。女性は自分を大切にするようになり、きれいになりたいという気持ちが強くなっています」

Mekong Beauty ShowでのSCCのブース

市場の成長により2つの方向性が出てきたと語る。ひとつは、収入増などにより高級品への消費が増えたことでの高級品市場の拡大、もうひとつは若者向けの手頃な商品の増加だ。ただ、ベトナムの化粧品市場は9割が海外ブランドと言われ、香水もほとんどが海外製品で占められている。

「そもそも香水メーカーが少ないですし、化粧品メーカーはあってもブランドとしては育っておらず、一般消費者向けに市場などで売られているのが現実。高級品はありません。国産商品のシェアは10~15%でしょうが、その分だけ成長の余地もあるのです」

海外ブランドが人気の理由は、昔はベトナム人の収入が低かったので化粧品は海外にいる家族や友人からもらうしかなく、それが習慣となって海外製品を使うようになったのだという。また、「海外のものが好き」というベトナム人の資質も影響しており、この現状を変えるのは難しいと語る。

その中で国産ブランドを売っていくには、新商品を出すことと、デザインに工夫したり、他社と同じ品質で価格を下げるなど、海外ブランドユーザーに向けたアピールをすることだそうだ。

「3~5年後に化粧品市場は一層拡大しており、特に中高級品の市場が大きくなると思います。そこで国産ブランドが伸びるために大切なのは、『ブランドを作ること』です。技術力があって、品質の高い商品を作っても、誰にも認知されなければ売れません」

ただ、幸運なこともあるという。最近では海外旅行に行く人が増え、また外資系企業に勤めた後でローカル企業に勤めたり、起業することも多くなっている。こうした「海外を知る新しいベトナム人」に対して、海外の多くの国がそうであるように、自国の商品を使う習慣を育てたいそうだ。

「日本人や韓国人も自分の国の化粧品を使いますが、お土産にもらったベトナムの化粧品が良い商品ならば、新しく使ってくれるかもしれません。ですから今後は、日本人向けの宣伝もしたいと思っているんです」

 

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