総力特集

Feature


飲食業の出店は珍しくないが、インパクトを伴う成功事例は極めて稀だ。それを成し遂げた男たち4人に話を聞いた。彼らはどんな人物なのか、ビジネスの勝算をどう考えたのか、成功した理由はどこにあるのか?
 

 

ますこ・ようすけ。1978年生まれ。大学卒業後に商社に入社。大手IT企業で広告事業に携わり、2008年にハノイに赴任。2011年にホーチミン市で「Pizza 4P’s」を開業。2014年に食材宅配サービスの「Box 4P’s」をスタート。

 

「予約が取れないピザ店」として知られるPizza 4P’s。2011年に出店して国内に8店舗と急成長中だが、2021年に100店舗展開、海外進出、食のテーマパーク開設など、その夢は止まらない。創業者の益子陽介氏が語る。

予約の取れない人気店8店舗、スタッフ1000人に

「以前から海外志向があって、前職でベトナム赴任を希望しました。仕事に不満は全くなかったけれど、可能性に満ち溢れるこの国で、好きなことをやりたいと思って独立しました」

好きなこととは「ピザ」。日本で以前に自宅の庭にピザ窯を作って友人を招待し、毎週末にピザパーティや子ども向けのピザ作り教室をしていた。初対面同士でもピザ作りを通してすぐに仲良くなり、笑顔が生まれ、それを自身も心底楽しんでいたそうだ。

「ブラータのピザ」

人気のメニューの「4種のチーズピザ」

開店資金は約10万USD。およそ半分を使ってホーチミン市のレタントン街に「Pizza 4P’s」をオープンした。2011年5月のことだ。

ターゲットはベトナム人の中~高所得者層を中心に、西洋人、日本人、韓国や台湾などのアジア人。「リーズナブルな価格で最高の品質」を考え、とにかく素材にはこだわった。特にチーズだが、求めるものは見つけられず、ネット動画で製法を学んで、半年を掛けてモッツアレラチーズを作ってしまう。

「当初は牛まで飼って自社牧場も持ちましたが、今はダラットにある3件の契約農家から牛乳を仕入れ、自社のチーズ工房で作っています。牛乳は1日3t弱、それが300kgのチーズになります」

このチーズを各店舗に配送する他、高級ホテルにも納入し、コンビニでも販売。主力事業はレストランだが、中長期的には波もあるので、食品製造事業を固めたいという思いもある。また、食材のEC販売である「BOX 4P’s」も始め、日本人や外国人の主婦、ベトナム人富裕層が主な顧客となっている。

土台ができると出店が加速。2015年9月には2号店となるハノイのリークォックスー店がオープン。翌2016年にはホーチミン市にフーミンフン店とベンタイン店、ハノイにチャンティエン店、ダナンにホアンヴァントュー店が開店し、今年10月にはホーチミン髙島屋内にサイゴンセンター店、11月にはハイバーチュン店がオープン。顧客は約7割がベトナム人、来店客は1店舗1日400~500人という。

「立地は妥協しません。例えばベンタイン店は象徴的なベンタイン市場の隣にあり、建物は100年以上前の伝統的なフレンチコロニアルです。200~300店舗を探して見つけました」

立地と共に大切にしているのが個性。各店でテーマを決めてインテリアや内装、メニューも決めている。サイゴンセンター店なら日本式庭園の「枯山水」、ハイバーチュン店は「農地のあるレストラン」がテーマだ。

これらを決めるのは益子氏を中心とする経営層であり、約1000人に増えたスタッフのマネジメントも担う。採用、オリエンテーション、トレーニングから、細かく分けた職位や昇給・昇進制度まで確立し、既に企業体として動いている。

「千客万来の異常事態が続いており、味やサービスの維持が欠かせませんが、店舗が増えるとさすがに目が届かない。そのため組織化を図りました」

海外1号店はインドへ ダラットで体験型パークも

益子氏の望みには先がある。その一つは「2021年に100店舗」。ピザとは別業態の出店や海外進出を含めての数字であり、海外1号店の最有力候補はインドだ。市場規模、ピザとの相性、チーズの強みを生かせることが理由で、来年中の出店を目指している。

チーズ工房でのチーズ作り


ベンタイン店

ナンとチーズの食文化を持つインド人はピザも日常的に食べているそうだが、「僕たちにとって美味しいピザには巡り会えなかった」と益子氏。また、チーズが普及している同地で自社のチーズは歓迎されると目しており、将来のフランチャイズ化の際にはインドをチーズの生産地として、各国へ輸出する考えもある。

「多くの国に出店するより、国を絞ってドミナント(集中的な多店舗)展開をしたい。ベトナムで事業をして感じたのは、早くブランドを作ると良い物件が取れたりなどの、アドバンテージが得られることでした」

今年8月には、Pizza 4P’s社の株式を100%保有する「4P’s Holdings」をシンガポールに設立。Pizza 4P’sを100%子会社化する予定だ。世界展開を見据えた布石であり、投資や海外送金での利便性を考えたという。

もう一つの夢は創業時からの目標である、体験型食のリゾート施設の開園。同社ではチーズを作った後に残るホエー(乳清)をルッコラなど野菜栽培の飼料などにリサイクルしているが、この工程を小さな土地で再現したり、牛の乳しぼりからチーズ作り、ピザ作りまでを体験してもらうなど、様々なアクティビティを考案中だ。来年ダラットにオープンさせたいと目を輝かせる。

「最近、特に2015年に外資規制がなくなってから出店が増えて、競争が激しくなり、料理もサービスのレベルも上がっています。しかも、ベトナム人は舌がかなり敏感。今はもう、危機感しかありません」

 

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