ライフ

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3000文字の良書梗概

どんな業界でも 記録的な成果を出す人の仕事力
なぜ「よそ者」が「業界のベテラン」に勝てるのか?


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book_201601自動車業界から始まり、飲料業界、IT業界、スポーツアパレル業界、エンターテインメント業界と渡り歩き、どの業界でも常に記録的な実績を残し、いままたハイアール アジアの社長兼CEOとして旧三洋電機のAQUAブランドを再生、15年間続いた赤字を就任1年で黒字に転換させた伊藤嘉明氏。なぜその業界の素人が、どんな業界であっても驚異的な成果を生み出せるのか。本書は、その理由を伊藤氏自身の経験を通して明らかにするとともに、これからのビジネスパーソンに求められるのは、この道何年の業界のプロではなく、どんな業界にも通用する「しなやかでしたたかな強さ」であり、それは「よそ者」ならではの強みを生かしてこそ得られるということを強調している。とりわけ業界のプロが30万枚しか売れないと断言したマイケル・ジャクソンのDVD『THIS IS IT』を、230万枚売り上げたくだりは、迫真のドキュメントともなっている。

「よそ者の素人に何がわかる」という洗礼に反発する

「よそ者に何がわかる」「素人だからそんなことが言える」

他の業界から移ってきた者に、まず行われる洗礼がこれだ。世の中の大半の人間は、その業界の常識を知らず、経験もゼロの者に、自分がこれまで何十年と働いてきた仕事場で好き放題発言されることが許せないのだ。

「ポット出」の意見より「その道のプロ」が考えることの方が絶対正しい。多くの業界人が、そう考えている。だが、それは思い込みに過ぎない。業界のプロが長年の経験から導き出した仮説より、よそ者の素人が直感で導き出した仮説が勝ることがある。ソニー・ピクチャーズ・エンタテインメント(SPE)在籍時に、マイケル・ジャクソンの『THIS IS IT』のDVD販売を仕掛けた話をする。

「30万枚。頑張ってマックス35万枚」

これがSPEのベテラン幹部たちが導き出した、日本市場における販売数だった。かつてはキングオブポップと呼ばれたマイケルも、全盛期の頃に比べると旬は過ぎている、35万枚いけば御の字というのが業界を知り尽くしたプロたちの結論だった。

だが、私はそうは思わなかった。世界的スーパースターが「私の最後のツアーだ」と公言して準備していたツアーの映像を収録した作品である。その価値は計り知れない。

「100万枚いくと思います」数ヶ月前にアディダス ジャパンという異業種から転職してきた私には、その数字の明確な根拠があるわけではなかった。だが、1人の音楽好きとして、普通に考えてもそれくらいは堅いと思ったのだ。

私の持論を聞いて当時の副社長は「伊藤さんはわかっていない」と言って、懇切丁寧にこんな説明をしてくれた。

「すでに大手のレンタルショップや販売店には話をしていますが、彼らでさえ5万枚も注文してくれない。一番大きい2箇所を合わせても、やっと10万枚です。あとは小さなレコード店しかない。全部足し合わせたって、30万枚さえきつい」

「いや、日本の人口が1億3000万人いることを考えれば、100万枚はいけます」と私が反論しても、「伊藤さんは、この業界の素人だからわかっていないんですよ」と返される始末。その副社長は最後に「無理です」と言い残し、会議室を出ていった。

こうした反応は私にとって、ある意味いつものこと。どこへ行っても「よそ者の素人に何がわかる」という態度を取られてきているから慣れたものである。むしろ火がついた。「わかりました。じゃあ目標を200万枚にします」

そう言った途端、会議室からさらに3人立ち上がって出ていった。

業界外の発想で新しい販売チャネルを次々と開拓

業界の大ベテランである彼らは、何を根拠に30万枚と見積もったのか。DVDの販売店や大手レンタルショップの店舗数や、過去の取引データだ。そこで売ろうとすると、30万枚は妥当な数字であり、この数字を大幅にアップすることは難しいのだろう。

だったら、「そこ以外」で売ればいい。DVDを、DVD販売店やレンタルショップ以外で売ってはいけないと誰が決めた?

それらの店舗を訪れるのは、主に20代から45歳の男性だけだ。日本の人口構成で4分の1程度に過ぎない。残りの巨大な「4分の3」にアプローチすれば、少なくとも100万枚は堅いはずだ。では、どうアプローチする?
これまで使っていなかったチャネルを使い、新しい客層にアプローチすればいい。これこそ「よそ者」の戦い方だ。

そして、私がとった数ある作戦の1つが「スポーツ用品店」への営業である。DVD業界の人間なら決して「DVDをスポーツ用品店で売ろう」という発想はしないだろう。スポーツ用品店で売れるはずがないと思っているし、DVDを取り扱ってくれるとも思わないし、そもそも取引がないのでアプローチのしようがない。

それが業界のベテランの見ている世界だ。だが、私に見えている世界は、それとは違う。『THIS IS IT』はスポーツ用品店で売れる。なぜなら、映像に映っているダンサーが着用しているスポーツウェアは、まさにスポーツ用品店で取り扱っているものだからだ。一方で、スポーツ用品店にも、このDVDを取り扱いたい理由がある。部活帰りの男子学生以外の、たとえば女性客を取り込みたいと考えており、『THIS IS IT』がその強力な武器となり得るからだ。

スポーツ用品店は、私がアディダス ジャパンでお世話になっていたチャネルだったが、自分のチャネルをチームに共有するだけでは根本的な解決にはならない。

「毛細血管のすみずみまで流せ」。これは『THIS IS IT』を200万枚販売するための合い言葉だ。毛細血管のすみずみまで流すためには顧客接点の多いチャネルをどんどん攻略していく必要がある。

私はみんなに、店舗数の多いチェーン店はどこかを考えさせた。たとえばコンビニ。当時コンビニチェーンで一番店数が多かったのはセブン-イレブンで1万4000店。次に多いのがローソンで、当時は9000店。当然、新規チャネルとして販売網に加えた。

しかしここで満足しない。「もっと多いところを考えろ」「チャネル戦略を練り直せ」と、ハッパをかけ続けた。国内で圧倒的な店舗数を誇り、しかも全世代が利用するところ。答えは郵便局だ。コンビニのない町はあるが、郵便局のない町はない。若者だけでなく、おじいちゃん、おばあちゃんも行く、子どもも行く。理想のチャネルだ。郵政民営化で国営から民営になったばかりのころ。彼らも民営になれば、何かそれらしいことをしなければいけない。いまはお中元ボックスなどを売り出しているが、そういうことを始めたばかりのころだ。

ここまで来てようやく、『THIS IS IT』のチャネル戦略がゴールに到達した。日本最大のチャネルを見つけたから、ではない。社員の考え方がガラリとかわったからだ。現場に考え続けさせることで、大手CDショップに流せばいいと考えていたころの思考は、消し飛んでいた。私が何も言わなくても、「高速道路のサービスエリアに置こう」「タクシーで売ろう」というアイデアが社員から自発的に出てくるようになっていた。

こうしたチャネルの見直しが功を奏し、『THIS IS IT』は最終的に、230万枚の売上げを記録した。

世界を変えていくのはいつだって「よそ者」「若者」「バカ者」

私はこれまで多くの業界で、それまで常識とされていたことを覆してきた。そのために、あるときは社内で反発を買い、あるときは業界団体から抗議の手紙をいただいた。だが私は、いつもこう反論している。「それって誰が決めた?」

納得できる返事をしてくれる人に、これまであまりお目にかかったことはない。

「それって誰が決めた?」という言葉は、ハイアール アジアでAQUAブランドの新製品を開発するときにもよく口にしている。たとえば洗濯機。「なぜこれまで、透明な洗濯機がなかったのか」と、ベテランの技術者に聞くと、こんな答えが返ってくる。

「汚いものは見たくない。これがユーザーの心理です」

本当にそうだろうか。では、透明で中身が見えるダイソンの掃除機はなぜ大ヒットしたのか。「こんなにゴミがとれた」と見えるのがうれしいからではないのか。だったら洗濯機も、「こんなに汚れがきれいに落ちた」と目に見える方がうれしいはずだ。そんな発想から生まれたのが、世界初の洗濯槽の中が見えるスケルトン洗濯機「クリア」だ。

業界の常識やルールに縛られずに突き進む。これが「よそ者」の強みとなる。

世界を変えていくのはいつだって、「よそ者」「若者」「バカ者」なのだ。私は喜んで、その3つになろうと思う。

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