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3000文字の良書梗概

ドイツ人はなぜ、1年に150日
休んでも仕事が回るのか 【後編】


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3000words_201602ドイツ人は日本人よりも自己主張が強いが、法律と規則の前には、おとなしくなる。グループの調和を重んじる日本に比べると、ドイツははるかに個人主義が強い社会である。だが、もし市民や企業が自分の利益だけを追求し、誰も彼らの行動を制御しなかったら、社会がばらばらになってしまう危険がある。そうした状態に歯止めをかけるために、法律が使われる。

ドイツ人は、無駄な仕事をしたり、無駄な時間を費やしたりすることをひどく嫌う。仕事をする時に「費用対効果」の関係を常に考えている。費やす時間や労力に比べて、得られる効果や利益が少ないと思われる場合には、仕事を始める前に、「そのような仕事をする意味があるのか」と真剣に議論する。

さらにドイツでは、「1日の労働時間が10時間を超えると、仕事の効率が目に見えて落ちるし、ミスをする危険が高まるので、長時間労働はしない」と考える人が多い。特に最近多くのドイツ企業では、「イノベーション」が重視されているが、新しいアイディアを生むには、気分転換が極めて重要である。

「インダストリー4.0」「社会的市場経済」が奏功

現在もドイツの労働生産性は日本を上回っているが、その差は今後さらに拡大する可能性が高い。その理由は、いまドイツ政府、産業界、学界が一体となって進めている第4の産業革命「インダストリー4.0」である。

インダストリー4.0とは、端的に言えばインターネットを使ったITと機械製造業の融合だ。機械や部品をセンサーを通じてインターネットと接続し、機械・部品が互いにコミュニケーションできるようにする。そのことによって、工業生産や製品流通の自動化を現在よりも大幅に進めるための、プロジェクトだ。ドイツ工学アカデミー(Acatech)は、「インダストリー4.0によって、ドイツ企業の労働生産性を少なくとも30%改善できる」と発表している。

日本では、一部の大企業が工業生産のデジタル化やIoT(Internet of Things:物のインターネット)について、個別に研究開発を進めているが、ドイツのように官民一体の国家プロジェクトにはなっていない。

ドイツの勤労者は、様々な法律や社会保障制度などの「多重防護システム」によって守られている。この背景にあるのは、戦後の西ドイツで生まれて、現在も脈々と続いている「社会的市場経済」の原則だ。

ドイツの社会的市場経済は、米英とは異なり、政府が大きな役割を果たす経済体制だ。企業は、政府が定めた法律の枠の中で競争をしなくてはならない。競争に敗れた企業や市民を救済するために、政府は社会保険制度を整備する。

「社会的市場経済」の根底にあるのは、「企業活動は株主や社員、経営者の個人的な利益だけでなく、公共の利益をも増進するべきだ」という考え方である。この経済システムは、成果を生むための競争を基盤とするが、競争が他者の存在を脅かすような事態は、防がなくてはならない。

「日本は変わらない」と思い込めば永遠に変わらない

ドイツと日本の間には、国民性や文化の面で大きな違いがある。したがって、ドイツ人が行っていることを全て日本でコピーするべきだとは思わない。特に、ドイツの商店や飲食店で、人件費の節約のためにサービスが悪くなっていることについては、我々日本人が真似する必要は全くない。

ただし、私は日本とドイツの両方で働いたことがあるが、勤労者の観点から見れば、ドイツ側に軍配を上げざるを得ない。日本でも今後「ワーク・ライフ・バランス」を重視する人が増えていくと思うが、この点ではドイツは先進国である。長い有給休暇、比較的短い労働時間は、企業の社員に対する慈悲心やサービスによるものではなく、法律によって定められているものだ。法律によって労働時間を制限すると同時に、仕事への高い集中度と具体的な成果を要求することによって、労働生産性を高くしている。

「そんなことを言っても、仕事が山積しているし、お客さんが待っているのだから、長時間働かざるを得ない。日本では夢物語だ」と思われる方が多いだろう。しかし、世界にはドイツのように、人間的な労働条件を実際に導入しているにもかかわらず、成功を収めている国がある。いつまでも「日本は変わらない」と思い込んでいたら、日本は絶対に変わらない。限られた時間の中で自分の持てる創造力を最大限に発揮して、仕事に高い付加価値を生み出すことだ。

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